「・・・」 ここで白石の名前を出さなかった私を褒めてほしい。 というか、白石なんかと比べたらかわいそうなくらいだ。 白石なら、新緑よりも爽やかな笑顔をいつだってくれるし、歯の浮きそうな台詞だって顔色ひとつ変えず言える。 テクニックだけじゃなくパワーも兼ね備えているらしいが、女の子にとっては顔だけじゃなくて性格も兼ね備えてる。 正にパーフェクト。白石最高。白石万歳。すこしの変態なんか気にしない。 「なんやねん急に黙って」 なのに目の前に居るのはそのパーフェクト男じゃなくて欠伸を噛み殺してるただの謙也だ。 「…白石のこと考えてた。」 「何やお前、白石好きやったん?意外やな」 教室に響く声はふたつしかない。 放課後、謙也と私は居残り補習でふたりきりになった。 何かを少しだけ期待した私がアホだったんだ。 居残るなり、「何や俺の他はだけか。もっと勉強できるやつと一緒になりたかったわ」と言い放った。 アホか、勉強ができないから居残ってるんだ。 そんなに勉強できるやつがいいなら、小春ちゃんとでも付き合え(そしてユウジに殴られろ) 「あいつはやめとき」 そりゃあのくらいの男なら、ライバルになろう人間はわんさかいるだろう。 間違って付き合えた日には靴に画鋲が入ってても、女友達がゼロになっててもおかしくはない。 そんな犠牲を払ってでも、近づきたいくらいに魅力的な男なのだ、白石は。 「ていうか」 白石の前に立てば誰だって恋する乙女になれる。 優しい言葉に心躍らせたり、他の女の子にも優しいのを見て心を痛めたり。 そんな甘酸っぱい青春が楽しめるはずだ。 なのに私が恋をしたのは、そのパーフェクトな王子様じゃなかった。 「俺、に、しとき…」 頭の中の白石が全部吹っ飛んでしまった。 人生惚れたモン負けというどっかのホモの言葉を痛いほど感じていた最近だったが、 いつの間にか耳まで真っ赤にして凝視する謙也を前にして、なんだか泣きそうなくらい嬉しかった。 「なっ、に…てゆ、か、…最初っから、謙也、だったし…」 謙也の時間だけが止まったかのように、微動だにしなくなった。 なんだその顔は。格好悪すぎる。というかむしろ面白すぎる。 こんなとき白石なら、ってもうどうでもいいか。 1008** 同じクラスゆえエクスタと比較されるあわれな謙也がすきです