『ひまたい(=^-ω-^)。o』 3限の休み時間がちょうど終わる頃にこんなメールが届いた。 送り主はなんと千歳千里だった。 携帯電話といえばほぼ受信機能だけの役割しか果たさない彼からメールが来たことに、 はまず驚いていた。 (てゆうか学校やし…。) 千歳の学校への出席率は半分を割ろうかというところなのは四天宝寺でももはや有名になりかけている。 今日もどこをほっつき歩いているのか(または家から出ていないのか)学校には姿を見せていない。 その上暇とのたまうのはどの口なのだろうか。 というかこの顔文字はなんだんだ。かわいい。かわいい。 あんな巨体でこんな文字を打ってるのかと思うと無性に笑えた。 それでなくとも、単純に千歳からメールを貰えた嬉しさからにやにやしてしまう。これは保護をかけなくては。 がゆっくりゆっくりと保護ボタンに指を伸ばすと、ちょうど隣の席の謙也が帰ってきて 「何にやにやしてんねんキモ」と言ってきたので椅子の足を蹴ってやった。 「なんやねん」と彼が言い終わる前に4限の先生が入ってきたので急いで返信した。 『暇やったら学校きてよ(=´;ω;`=)』 送信しましたの画面が出る前に鞄に携帯を投げ込み、机から数学のノートを引っ張り出した。 「千歳やん」 廊下の方で誰かがそう言ったのが聞こえたのは、もう昼休みだった。 「えらい社長出勤やなあ」 「はは、来ただけましたい。は?」 「多分教室いるやろ」 がららと教室の戸が開き、そこには190センチ超えの大男が立っていた。 はというと既に昼食を終えて友達と談笑を楽しんでいたところだった。 「ちとせ」 「おはようさん」 「もうこんにちはや。何や、学校きたんやね」 「が泣いとったけんね。走ってきたばい」 の割りにまったく汗ばんでいない大男がのっそりとの席の隣に腰掛ける頃には、友達はいなくなっていた。 と思ったら教室の隅でにやにやしている。空気読みすぎて泣けるわ、あんたら。 「千歳があないな顔文字使うてくるとは思わんかった」 「後輩から教えてもらったとよ。お前さんこそむぞらしか顔文字使って」 まあ本物の方がよっぽどむぞらしかね。 と、千歳の必殺殺し文句が炸裂したところで「千歳、お前1組やろが!」とどつかれて出て行ってしまった。 「厳しかねえ、じゃあな」 とひらひら手を振る千歳と、どかりと座る謙也。 あんな台詞を言われたのに「も、もう…!」とか、かあっ…と顔を赤らめるとか、 かわいい反応が何も出来なかった。さいていだ。 「いちゃつくなら他所でやれや」 とため息をつく謙也は、もう少し私の友達を見習ったほうがいい。 声にならない思いを本日二度目の制裁に込めて、今度は謙也自身の足に食らわせてやった。 1008** ちとせとメールがしたいです